暗い気持ちで書きました。

『ロスト シネマ パラダイス』

便利な時代だ

おれは
何かの不具合で深夜
家を飛び出す
やり切れない
気持ちを抱えて でもちゃっかり
ポケットに
スマートフォン と
wifi

公園のベンチ

さまざまな映画の予告編を見る

かつて見た
懐かしい映画の
予告編

映画なんて もうまるで 観てないな

手のひらのなか
スマートフォンが光る
イヤフォンをしっかり
耳に押しこんで

「息もつけないぜ」
と叫び
若き日のリチャードギアが
拳銃を拾い上げた

ゲイリービジーが
ミートボールサンドを
食み
キアヌリーブスと
パトリックスウェイジが
掴み合う

ドニラヴァンが
走る 走る 止まる 戻る

ピーターフォークが分厚い手を
差し出して
「コンパニエーロ」
と微笑む

いつの間にか
かつて見た映画ばかりを
繰り返し
繰り返し

おれはどこからやってきたんだ
この公園に

忘れてしまった
現実なんて